HP研修報告 R8.1-R8.3

3月24日 TKC中部会 生涯研修

 社会保険労務士・特定社会保険労務士の志水美和子氏をお迎えして、「労務管理(面接から退職まで)問題社員の対応あれこれ」と題して講演していただきました。
 当日の研修では、本当に小さな会社の具体的な事例を挙げてお話ししてもらいました。
 私にとって一番印象的だったのは、入社試験のことです。今は履歴書、入社の動機など前もって与えると、みなAIに書いてもらってくるので、本当の人となりがわかりません。だから、当日来てもらった時に400字詰め原稿用紙1枚でいいので「仕事とは?」というお題で作文を書いてもらう。文字は丁寧に書けているか、漢字は正しく書けているか、話に起承転結があるか、などを見れば、十分その人のことがわかるということでした。また、器用さをみるには折り紙で鶴を折らせれば分かる、というのも面白いと思いました。
2番目は、面接は必ず複数で行うこと、社長面接は必ずすること。それは、やめてもらうのには採用よりもっと労力がかかるので、面接はよく考えて慎重に行うこと、最低2回はすること。採用面接に来た時にどんな車に乗っているかをチェックするのも大切、など具体的で正鵠を得ていると思いました。また、転職希望者には、「前の会社をなんで辞めたか?」を、いろいろ質問を変えて聞いてみることで、自社にあった人かがわかる。反対に面接で聞いてはいけないことに「尊敬する人」「読んでいる本」と言われたことに、理由は忘れてしまいましたが少し驚きました。「最初の3か月は様子をみさせてもらって、あなたのスキルを見極めたい」くらいの交渉は必要だということでした。
3番目は、何が労働時間となるのか、これを押さえておかないと、社員が退職に際して残業代の未払請求をしてきたときにあわてることになる。最初の契約時に退職時のトラブルを見越して条項を盛り込むように、という注意がありました。就業規則など決めるときは良く考えて。守らなければならないことはのせるが、どちらでもいいことで格好付けて守れないことは載せないこと。「新人3年3割退職」という世の中だそうです。日頃から顔を合わせて話をすることで、何を考えているか、価値観などを知ることの大切さを説かれていました。
4番目は、今後の最低賃金の上昇、初任給30万円時代の到来、今後の社会保険適用拡大に備えて、利益のでる会社をどう作るか、を考えていかないと会社は継続できないよ、というのは脅しではなく真実だと思いました。

2月3日 TKC中部会生涯研修

 税理士の笹岡宏保先生に「相続税の微妙な法令解釈等の検証」と題する講義を受けました。研修内容は(1)相続時精算課税制度の適用を受ける場合における相続時精算課税適用財産の範囲に係る解釈、(2)相続税の債務控除の適用に当たって相続税法第14条に規定する確実な債務の意義に係る解釈、(3)相続税等の宅地評価において側方路線影響加算が必要と認められる内接角度の数値に係る解釈の3点でした。
(1)の検討事例は、東京地裁令和7年1月16日判決定)でした。その内容は相続人2名が平成21年にそれぞれ現金の贈与を受け、相続時精算課税制度の選択をしたところ、課税庁は、被相続人の相続税の申告について平成21年に被相続人所有の土地上に建物建築工事請負契約を締結しており、この土地は借地権の取引慣行がある地域に所在しているため、借地権相当額の経済的利益のみなし贈与を受けているとして相続財産に加算すべきとして課税処分をしました。この年に相続時精算課税制度の選択届出書を提出しているため、当然に相続時精算課税制度を適用した財産になるとされました。それに対し原告は、相続開始が令和元年なので、贈与税に対する更正決定等の除籍期間が経過している等の主張をしました。相続時精算課税制度の適用後は何年前のものであっても加算することになっている(申告の有無を問わない)等の理解不足に基づく主張等は全て退けられました。
(2)の検討事例は、令和元年8月の裁決(令和元6-27公表裁決)でした。その内容は、被相続人が生前にした工事請負契約に基づき、相続開始後にされた修繕工事に係る請負代金相当額が、債務控除できるかどうかという争いでした。「相続税法第14条1項は、同法第13条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る旨規定しているところ、同項にいう確実と認められる債務とは、相続開始当時の現況に照らし、その履行が確実と認められるものをいうと解される。」として棄却されたものです。それは、相続開始時にはまだ工事が着手されておらず、請負契約の履行の要否すら不確実な状態にあり、賃借人は従前どおり貸倉庫の使用を続けていたとして、確実な債務には当たらない、とされたものでした。
(3)の検討事例は、「月間税理2025.5」に掲載されている笹岡先生の設問と解説を基に、検討されました。
 私は、(1)の件について、納税者がよくこの制度を理解しないまま選択していて、相続税の申告に際し驚かれたことがあります。相続税法の改正により相続時精算課税制度を選択する人が増えているようですが、最初の説明の重要性は増していると思います。書面で残しておくことが大切でしょう。

1月6日 ミサワホームオンライン研修

 税理士の今仲清先生による「税務調査で否認を受けない相続税の書面添付の仕方」と題して研修がありました。今仲先生の事務所で作成している書面添付についての研修は複数回受講しているのですが、今回は「必要書類の集め方から預貯金入出金表・名義預金判定まで」がテーマでした。
 相続税申告と所得税・法人税申告の違いは、相続税申告の依頼人は、本人ではなくて相続人だということです。そして、相続人がお亡くなりになった人(被相続人)の財産・債務の全てを知っているわけではないということです。そこで、「税理士として被相続人しか知り得ない情報についても、相当の注意をもって真正の事実に基づいて申告書を作成する義務があります。しかし、税理士として可能な限り相当注意義務を果たしても見つからない財産があるということもあり得ます。このような場合には、税理士としての責任を果たしているといえます。」と先生は言われます。私としてはできる限りの情報収集ができたのか、をいつも問い続けることになります。
 さて、具体的な作業の1番は、銀行や証券会社への過去7年間程度の取引記録の写しの請求をすることです。(本人が全てを保存しており、相続人が見つけられた場合はそれによります。金融機関によりまちまちですが、結構費用が掛かります。相続人にその意義を納得してもらって取り寄せてもらいます。)そして、いくつもの金融機関等の入出金の事績を一覧表にして資金移動を確認します。それだけでは確認できないことについて、相続人が貰っていないかを確認したり、相続人からその頃大きな出費があるイベントがなかったかなどを聞き取りします。また、一緒に住んでいた配偶者や相続人家族の預金通帳も確認し、資金移動がないかを確認します。また、ラウンドでの出金が生活費に見合っているかも検討します。名義預金かどうかの判定基準を明確にして慎重な判断が必要です。私も過去に一度被相続人が20冊くらい名義預金通帳を作っていて、その調査がとても大変だったことを記憶しています。それ以降、添付書面の記載にこだわるようになりました。相続人にも「記載のために知り得る限り協力してほしい、今書いておかなければ結局調査で聞かれます。」と伝えています。
 それらの調査結果を添付書面(「申告書の作成に関する計算事項等記載書面」)にどうやって書くか、というのが次の問題です。具体的事例を今仲先生の事務所で作成しているものを見せてもらいました。電子申告の都合で最大5頁までしか書けないので、ポイントを絞り、内容は濃く書くことが必要だと思います。とても参考になりました。

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